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『へろへろ』には”元気玉”の作り方が書いてあります

 

福岡市のあるマンションに、ぼけているのに気骨で激しい気性のため妖怪のようになってしまったおばあさんが住んでいました。度々、異臭騒ぎやボヤ騒ぎを起こしてるのにもかかわらず、マンションの住人はその妖怪に太刀打ちできません。

   その状況をなんとかするべく下村恵美子という社会福祉士に声がかかります。彼女は「とてつもないばあさま」がいると聞くと、胸が高鳴り、その顔を拝まなければ気が済まなくなるという珍しいタイプで、しかも暇を持て余していました。

    彼女は早速、妖怪の住むマンションへ出向きチャイムを押します。

    信じられない臭気をまとい、垢まみれの服を着たザンバラ髪の老人が姿を現します。

   「あんたぁ誰ね!なんの用ね!」

  今まで出会った中でも、最強クラスのばあさまの登場に下村恵美子はときめき、喜びに震えます。

 

  と、いうのがこの本の冒頭です。敵が強いとワクワクする孫悟空を連想せずにいられません。

  この出会いをきっかけに下村恵美子さんという方が、いろいろな人々を巻き込みながら、無謀で無計画で前例も保証もなく、ただ、やれるという気持ちだけで本当に老人介護施設を作ってしまいます。実話です。

   

    何かを始めようとするとき、失敗を恐れるがあまり行動出来ない時があります。私もよくあります。次へ踏み出すべき時とわかっていても、その一歩が踏み出せない。

   そんな時に読むべき本がこの『へろへろ』という作品だと思います。

 

  作中にこんな一文があります。

" 

制度があるからやるのではない。施設が作りたいからやるのではない。思いがあるからやるのではない。夢を実現したいからやるのではない。目の前になんとかしないとどうにもならない人がいるからやるのだ。その必要に迫られたからやるのだ。それは理念ではない。行動のあり方だ。頭で考えるより前にとにかく身体動かす。要するに「つべこべ言わずにちゃっちゃとやる!」のだ。"

   胸に刺さりました。次への一歩が踏み出せないとき、きっとこの言葉を思い出すでしょう。

  老人介護にかかわっている方はもちろん、何かを始めようとしている方にも読んでいただきたいと思います。

  みんなの元気が集まり、不可能が可能になっていく痛快なお話です。

 

『へろへろ    雑誌「よれよれ」と「宅老所よりあい」の人々』鹿子裕文(2015,12,15)ナナロク社

 

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