この写真は、自閉症の息子が3歳の頃に8歳の長男と一緒に撮った写真です。
我が家の洗面台の横に飾ってあるので毎日見ています。
長男は3歳の二男に対してとても優しく、一緒に遊び、この頃には弟が自閉症であることも理解していたと思います。
私は、毎日この笑顔で弟を背負う長男の写真を見ながら2つの事を思います。
"弟を笑顔で背負って欲しい。
けれど、弟を笑顔で背負わせてはいけない。"
私は15年前、ちょうどこの写真の頃に、"きょうだい児"という言葉を初めて耳にしました。
今回は一般的にはあまり知られていない"きょうだい児"というものについて書いてみようと思います。
少しでも、きょうだい児のことについて理解が深まれば嬉しいです。
・きょうだい児とは
・きょうだい児ケアの重要性
・我が家のきょうだい児(長男)について
順番に説明していきます。
きょうだい児とは
きょうだい児とは、障がいや病気をもった子の兄弟姉妹のことをいいます。
我が家では、二男が自閉症という障がいをもって生まれているので、長男が"きょうだい児"になります。
自閉症スペクトラムに限らず、障がいを持つお子さんがいらっしゃる家庭では、障がいを持つお子さんの療育が中心の生活となるため、きょうだい児は家庭内の生活全般に我慢を強いられます。
我慢だけでなく、本来なら大人がすべき役割をきょうだい児が担わなければならない状況になる場合もあり、同世代の子ども達に比べ、負担の多い幼少期を過ごさねばならない状況になります。
結果的に、早く大人になる事を強いられ、一見なんでも出来る優秀な子どもに育ったように見えますが、実際はそうではない場合があります。
きょうだい児のケアの重要性
子どもが子どもらしく育つことのできなかった家庭つまり"機能不全の家庭"で育った大人を"アダルトチルドレン "と呼びます。
機能不全の家庭とは、DVやネグレクト、保護者のアルコール依存症などに限りません。
きょうだい児に対して肉体的、精神的負担を強いる家庭環境も機能不全の家庭と言えます。
つまり、きょうだい児がアダルトチルドレン になるケースは少なくありません。
アダルトチルドレン
アダルトチルドレン とは、機能不全の家庭で育ち大人になった人という意味で使われ、次のような5つのタイプに分類されます。
ヒーロー (優等生): 家族の期待を背負い頑張る。完璧にできない自分を責める。
スケープゴート (身代わり): 家族の中にある葛藤や緊張から目をそらさせるために問題行動等を起こす。
ロストワン (いない子): 存在しないふりをする。目立たない事で自分を守る。孤独感が強い。
クラウン (道化師): わざとおどけて家族間の緊張をとく。自分の辛さをはっきりと言葉にできない。
ケアテイカー (世話役): 家族の世話を過度にする。常に自分の事は後回しなため、自分のやりたいことがわからなくなる。
これらのタイプ全てが、心的外傷が原因となっており、大人になっても子どものころの家庭での経験をひきずり、生きる上で支障をきたしている場合があります。
アダルトチルドレン傾向が見られるきょうだい児への対応
上記5タイプは、一人1タイプではなく、複数該当したり成長と共に入れ替わったりもするとも言われます。
ヒーロー、ケアテイカーのタイプは一見優等生に見えますが、心の傷を表に出せず、苦しんでいる場合があります。
スケープゴートやクラウンは問題の本質を本人自身が意識していない場合も多く、ロストワンに関してはただの消極的な性格と片付けられてしまっているケースもあるでしょう。
加えて、きょうだい児は、自分は健常者(定型発達者)なのだから、全て普通に出来て当たりまえ、と思い込みやすいので、本人は困っていても相談することができません。
注意深く子どもの様子を見ながら、少しでも気持ちを楽にさせてあげられるように働きかけてあげて欲しいと思います。
機能不全の家庭で育ったとしても、その本人の行動をみとめてしっかりと愛情を注いでいれば、アダルトチルドレンとして苦しむことは避けられると言われます。
出来るだけ早い段階できょうだい児へのケアを意識して、接してあげるべきだと考えます。
きょうだい児の支援機関
きょうだい児のケアには、本人が悩みを相談したり、自己開示のできる環境が必要と言われます。
きょうだい児との関わりに対して、親が対応する事が難しい場合、各県ごとに必ずきょうだい児支援機関が存在します。
専門性の高い知識を持つスタッフや、同じような環境のきょうだい児の集まるコミュニティがあるので、必要な場合は問い合わせてみることをおすすめします。
我が家の長男も一時期活動に参加していた時期がありました。
私自身、その活動自体にとても良い印象を持っています。
我が家のきょうだい児(長男)について
長男とは日頃頻繁に連絡は取り合っていますが、今回、きょうだい児についての記事を書くにあたり、改めてきょうだい児としての意見を聞いてみました。
きょうだい児(長男)の意見
Q:弟の自閉症をいつ頃意識したか
A:小学2年生ごろ
自閉症という言葉を何となく知る
Q:きょうだい児として印象的な思い出は
A:
○幼少期
自閉症自体を特に気にすることはない
自分のことで手一杯(遊び)
弟と一緒に遊ぶことは多い(外遊び)
○思春期
弟のように障害を持つ人に、冷ややかな態度をとる人がいると知る。
↓
人の目が気になる。
家庭内で落ち着ける時が少ない。(大声やものを投げる行動などで)
自分の勉強に集中できないことが増え、ストレスを感じる。
喧嘩をすることもたまにある
○青年期
家を出て、一緒にいる時間が減りはしたが、帰省したときは仲良くコミュニケーションをとる。
帰省していないときでも、弟の将来のことはたまに気にかける。
Q:きょうだい児の兄からみて弟はどんな存在か
A:自分を繕わないで接することができる存在 ・家族
弟はどんな存在かという質問に「自分を繕わないで接することができる存在」とあります。
私はこれを聞いて、長男にとって負担に思ったこともある弟が、現在は自己開示できる場所になっている事を知りました。
弟という存在を自分を開示できる場所として受け入れられた事は、長男の自己肯定の一つとして、とても意義のある事だと思います。
長男が今まで感じてきたこと、抱えてきたことの全てを理解すること、解消することは出来ないかもしれません。
しかし、それらを協力して解決していこうという姿勢は今後も続けていきたいと思います。
きょうだい児の親として
冒頭で、息子たちのうつる写真の話をしました。
"弟を笑顔で背負って欲しい。けれど、弟を笑顔で背負わせてはいけない。"
という言葉は、相反していますが、きょうだい児と関わる上でどちらも重要だと考えます。
"弟を笑顔で背負って欲しい"という想いには、強く前向きに生きて欲しい、弟との将来について悲観的にならず、人生をポジティブに捉え、兄弟として関わり続けて欲しいという気持ちがあります。
"弟を笑顔で背負わせてはいけない"という想いには、長男の負担を軽減する、無理をさせない、と自分を律する気持ちと、これまでの長男が弟に対し行ってきた関わりに対しての感謝の気持ちがあります。
毎朝、この写真を見ながらこの2つの気持ちを忘れないようにすることが、私のきょうだい児(長男)への取り組みの一つです。
まとめ
長くなってしまいました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回、きょうだい児についての記事を書くにあたり、伝えたかった事は以下の2つです。
・きょうだい児とは何か
・きょうだい児ケアの重要性
とくに、きょうだい児との関わりがある方には、アダルトチルドレン という観点も含めて、きょうだい児との関わり方のヒントにしていただければと思います。