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【2019年】読んだ本BEST3

 

私が今年読んだ本の中で、特に良かった上位3作品を紹介します。

◆森 達也『A3[上][下]』(2012,12,20)集英社文庫

多くのオウム真理教信者が衆院選に立候補した1990年、私は麻原彰晃が出馬した東京都4区の区域内である中野に住んでいました。

街中に繰り広げられる風変わりな選挙運動を見ながら、私はその集団に対して、うまく言い表せない違和感のようなもの感じていました。その違和感が具体的になんなのか、当時の私にはわかりませんでしたが、そこから5年後、地下鉄サリン事件をきっかけに、私を含めたすべての人々がその違和感の正体を知ることになります。

『A3』は、ドキュメンタリー映画監督としても有名な森 達也による、ノンフィクション作品で、これまでに多数出版されたオウム関連の書籍の中では最終報告的なものになります。昨年の実行犯の死刑によって事件は全て解決したかのように見えますが、本書にあるいくつもの衝撃的な事実に、改めてこの事件について考えさせられました。

 

◆千葉雅也『勉強の哲学ー来たるべきバカのために』(2017,4,10)文藝春秋

"勉強とは、これまでの自分を失って、変身することである。だが人はおそらく、変身を恐れるから勉強を恐れている。"

と、この本の帯に書いてあります。惹きつけられるキラーワードです。

実際に読んでみると、帯にあったようなキラーワードが盛りだくさんで、しかもとても読みやすい文章で書かれています。

勉強とは自己破壊である、と作者は言います。勉強することで、「ノリが悪い」「浮く」人間になり、固定概念から一度解放される。そして、それをユーモアとして楽しみつつ、周りにバカにされる事を受け入れることで、新たな発想を生み出し、それまで越えられなかった困難を越えられる可能性に近づく、と。

読み進めるうちにとても納得がいきました。この本のような、一見信じられないような話が腑に落ちる瞬間には、なんとも言えない気持ち良さがあります。未来に来たるべきバカを目指しましょう。

◆コーマック・マッカーシー『ザ・ロード』(2010,5,25)ハヤカワepi文庫

" 荒廃した世界。地上には灰が積もり、気候は寒冷化、わずかに生き残った人々は飢えのため人肉食が恒常化しています。
そんな世界の中、父親と幼い息子はショッピングカートに荷物を積め、南に向かって旅をします。あると信じた安住の地を求めて。"

『砂の器』や、『子連れ狼』、以前紹介したドキュメンタリー映画『輪廻の少年』のように、私は親と子どもが旅をする話に共感し過ぎてしまう傾向があります。

自分の境遇を重ねやすいという事もあるかもしれませんが、だとしても、この『ザ・ロード』という作品は、私の共感を誘うものがまさしく「全部のせ」状態で、読了するまで完全に作中の親子と共に旅していました。

作中に「火を運ぶ」という表現が出てきます。「火」とは、どんなに過酷な環境であっても、善良であること、人間の尊厳を失わない事を指します。親はその火を守り、子はその火を受け、その火をまた誰かに運ぶ。

このテーマは私のテーマでもあり、同じように感じられる人間が本の中に存在していることを、嬉しく思いました。そして、現実でも火を運ぶ人々が一人でも多く存在することを願っています。

 

以上3作品が今年読んだ本の中で特に良かったものです。どの作品も素晴らしくジャンルも違うので順位はつけられませんでした。

2020年も良い本に出会いたいと思っています。
長くなりました。ここまで読んでくれてありがとうございます。

 

 

 

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