※ 今回の感想は本編の結末に触れますので、鑑賞予定の方はご注意ください。
今回ご紹介する映画『メッセージ』は、アメリカ人の作家テッド・チャンによる小説「あなたの人生の物語」を原作に映画化された、SF映画作品です。
私は、地球を侵略しに来る宇宙人の映画も好きですが、地球にやってくる友好的な宇宙人の映画はもっと好きです。
有名なところを挙げると『未知との遭遇』『COCOON』『コンタクト』などでしょうか。
映画『メッセージ』もそれらの作品群の中に入ると思います。
~あらすじ~
" 突如地上に降り立った、巨大な球体型宇宙船。
謎の知的生命体と意志の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は、“彼ら”が人類に<何>を伝えようとしているのかを探っていく。
その謎を知ったルイーズを待ち受ける、美しくそして残酷な切なさを秘めた人類へのラストメッセージとは―。"
この作品の公開時、観た人たちの感想は別れました。
私はこの評価の分かれる理由は、この原作のタイトルでもある"あなたの人生の物語"が大きく関係すると思いました。
作品を観たこれまでの"あなたの人生"がどのような人生だったかによって、作品の見え方が大きく変わってしまうタイプの作品なのではないではないかと感じます。
作中、主人公である言語学者のルイーズは、異星人との対話の中で、時間を超えた言語というものを理解し始めます。
そして、結果的に自分の未来を見てしまう事になります。
ルイーズが見た未来とは、数年後、自分は最愛の娘を授かり、幸福な時間を過ごすというもの。そして、その娘を難病により失う、というものでした。
最高の幸福と、最悪の不幸がセットで確定された未来を、受け入れられるか否かが、この作品を受け入れられる派(肯定派)、受け入れられない派(否定派)に分けられるのではないかと思いました。
私は主人公のルイーズと同じ受け入れられる派だと思います。
受け入れられない派は、たとえ良い事があったとしても、最悪な事は体験したくはない、リスクのある未来は選びたくない、と考えるのだと思います。
その気持ちもわかります。
しかし、私はそれでも最高と最悪が同居した未来を受け入れたいと思いました。
私自身、今の人生において、苦しいことや後悔もたくさんありますが、今の人生でしか経験できなかった幸福があると実感しています。
それに、たとえ他の未来を選択したとしても、苦しみが何も無いはずはありません。
他の未来を選択した時の幸福に、今の幸福が劣っているとも思いません。
運命(避けられない出来事)を悲観的に捉えるか楽観的に捉えられるかは、今を生きる自分がいつでも決められるのではないでしょうか。
映画『メッセージ』から、たとえその先に悲しい出来事が待っていたとしても、その悲しみも含めて自分の人生を前向きに肯定しようと思えるような”メッセージ”を、この作品から受け取ったような気がします。
監督:ドゥニ・ヴィルヌーブ『メッセージ』2016年