1982年に公開された『少林寺』という映画にこんなシーンがあります。
瀕死の青年を助ける為に、少林寺の僧侶は禁(生き物を殺してはいけない)を犯してカエルのスープを作り、青年に飲ませます。
僧侶「うまいか」
青年「…はい(涙)」
とてもいいシーンなのですが、まだ子どもだった私は、どうしてもカエルがノイズになってしまい複雑な心境でした。
体調の良くない時に、栄養をとるために食べる物がありますが、食べたいものばかりとは限りません。
私が子どもの頃は、世の中にまだ民間療法的なものはしっかりと残っており、私の母親はそういったものを疑いもせずにせっせと作っていました。
中でも特に苦手だったものをあげてみます。
卵酒
酒に卵と砂糖を混ぜ温めたものです。
最近は聞いた事も無い人が多いと思いますが、当時は風邪をひいた時に飲むものとしてポピュラーなものでした。
そもそも20歳未満に飲ませていいのどうかもあやしいところですが、これがとても苦手で、あれを飲むくらいなら苦い薬のほうが何倍もマシだと思っていました。
くず湯
高価な葛粉ではなく、普通の片栗粉を熱湯でゲル状にして砂糖を入れたものです。
ひと口目はいいのですが、すぐ飽きる味です。ただの砂糖水の味ですから当たり前なのですが、シンプルすぎる味のため食べきる事が困難でした。
大根ジュース
大根をおろして絞った絞り汁に蜂蜜を入れたものです。
母親がテレビかなにかで知ったレシピだと思うのですが、私にとって、風邪をひいたときに最も登場して欲しくないものでした。
とにかくめちゃくちゃ辛いです。
辛みを和らげるはずの蜂蜜が何の役にも立っていない激辛大根味でした。
ひと口飲むと辛さとストレス性のショックで咳が止まってしまうため、母親は効いたと思い、しばらくの間作り続けていました。
未だに大根をおろすたびに思い出します。
体調を良くするために、何かを作ってくれた母親には感謝しかありませんが、一昔前の〈看病料理〉には、えげつない味のものがいくつかあったことを振り返ってみました。