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映画『ターミネーター:ニュー・フェイト』はターミネーター3を超えたのか

 

 

 1985年に公開されたジェームズ・キャメロン監督作品『ターミネーター』を初めて観た時の感動は忘れられません。

 

   SF、ホラー、アクション、ラブロマンス、全てのジャンルの面白さを、ここまで全て兼ね備えた映画は観たことがありませんでした。

   ただ、公開当時はB級なジャンルムービーと敬遠されたためか、一部の映画ファンに評価される程度の人気だったことを覚えています。

 

   その後、ビデオデッキやレンタルビデオの普及と、アーノルド・シュワルツェネッガーという肉体派アクションスターの認知度も合わせて『ターミネーター』という作品の人気は徐々に広がります。

   1991年、満を持して続編『ターミネーター2』が公開されると、作品の知名度は爆発的に上がりました。当時は画期的だったCGによる映像と、てんこ盛りのアクションは観客を圧倒し、観客動員数も興行収入も前作と比べ数倍に跳ね上がります。

 

 

  問題は2003年に公開された『ターミネーター3』です。

   ターミネーター2(以下T2)を超える約2億ドルの予算で制作されますが、監督の交代と、キャスティングの違和感、マトリックスシリーズやロード・オブ・ザ・リングシリーズなど、新世代のシリーズものの人気に押される形で、『ターミネーター3』は予想をしていたほど興行的な成果は得られませんでした。

   この『ターミネーター3』の不人気をきっかけとしてターミネーターシリーズは徐々に下火となります。

 

  『ターミネーター4』『ターミネーター:新起動/ジェニシス』テレビシリーズ『ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ』と定期的に制作はされますが、大きなヒットとなるものはありませんでした。

 

 

  以上の経緯を経て、2019年最新作『ターミネーター:ニューフェイト』が公開されました。

   今作の注目すべき点は、ターミネーターの生みの親であるジェームズ・キャメロンが製作に復帰した事と、オリジナルキャストのリンダ・ハミルトンの復帰です。

 

   不評だった『ターミネーター3』に欠けてていたものは、まさしくジェームズ・キャメロンとターミネーターという作品の主役であるサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)だった、もしくはそう思うことで、ガッカリ感を紛らわした人も少なくはなかったのではないでしょうか。

   ターミネーターシリーズの核を取り戻し、『ターミネーター3』以降の作品を無かったこと(パラレルワールド)としてまで作られた本作が、はたして『T2』の正当な続編として説得力のあるものなのかどうかを、自分の目でしっかりと確かめるべく鑑賞ました。

 

『ターミネーター:ニューフェイト』 ~あらすじ~

 

"  メキシコシティの自動車工場で働く女性ダニーは、ある日突然、未来から来たターミネーター“REV-9”に襲われる。

ダニーを守ったのは、同じく未来から送り込まれた強化型兵士、グレース。彼女の並外れた戦闘能力により、REV-9を撃退するが、決して死なないその最新型ターミネーターは、再び彼女たちに襲い掛かる。

そんな中、必死に逃げ惑う2人を救ったのは、人類の未来のためにターミネーターと戦い続ける戦士、サラ・コナーだった——"

 

『ターミネーター:ニューフェイト』 考察

 

結論から言うと、『ターミネーター:ニューフェイト』はとても良かったです。

  

特に良かったと感じた点は、以下の4つです。

・精巧なCG

・洗練されたターミネーターマナー

・日本のアニメや漫画の影響

・「ターミネーターシリーズ」でおなじみの”犬”

順番に解説していきます。

 

精巧なCG

  

 冒頭、『T2』直後のサラとジョンの日常が描かれます。

 

   未公開シーンの引用でもなく、特殊メイクでもなく、当然CGな訳ですが、その二人の存在感が『T2』の頃のままで、全く違和感がありません。

   人間の挙動、質感、ここまでCGで出来るなら、今後の映画界において、もうキャスティングに悩む必要は無くなる日は近いと確信しました。

 

  T2』公開時にCGの表現に驚かされましたが、今回更に進化したCGの表現によって驚かされることで、観客はターミネーターという作品が、常に映像表現の最先端であったことを思い出します。

 

洗練されたターミネーターマナー

  

 観客は、この作品が「ターミネーターシリーズ」であるとわかった上で鑑賞しています。

   初めて観たターミネーターが本作であるという人もいるかもしれませんが、大半の人はお馴染みの登場人物の登場、過去作の引用、おきまりの例のセリフを楽しみに観ています。

 

   しかし、このシリーズものにおけるお約束シーンというのは諸刃の剣で、引用のさじ加減を間違えてしまうととても格好の悪い白けたシーンになってしまいます。

   

 本作は、その点は大丈夫でした。極力さりげなく、しかもファンにはしっかりと届くターミネーターマナーが満載です。

   

   私が好きなシーンは、冒頭でグレースが靴を手に入れるシーンです。

   靴と足を合わせてサイズを測るシーンは、昔からのターミネーターファンにとっては懐かしくとても嬉しいサービスシーンでした。

 

日本のアニメや漫画から影響を受けている部分

 

 『ターミネーター』を初めて観た時、機械人間対レジスタンスの戦闘シーンを観ながら映画『さよなら銀河鉄道999』を思い出し、『T2』を初めて観た時は、漫画『寄生獣』を連想しました。

   真似たかどうかはともかく、国外の映画人が日本のサブカルチャーに影響を受けている事は間違いありません。

 

   そして、そういった互いに影響しあう文化交流を私は嬉しく思います。

 

  本作『ターミネーター:ニューフェイト』において、個人的にはアニメ『魔法少女まどかマギカ』の影響を予想しました。

  登場人物の相関関係を見ると、きっと監督、又は脚本に携わった誰かが『『魔法少女まどかマギカ』を観ていたのではないか、と思えるような箇所がいくつかありました。

 

「ターミネーターシリーズ」でおなじみの”犬”

 

  全ての「ターミネーターシリーズ」において、犬は、擬態したターミネーターを見分ける役目として登場します。

 

   少しネタバレかもしれませんが、本作のT-800は犬を飼っています。

 

   さりげないシーンですが、T-800が犬と信頼関係を築くために、どれだけ苦労したのかと想像すると泣けます。

   AIT-800と、悪しき未来を創り続ける人間とでは、いったいどちらが人間的なのか、という疑問を改めて考え直すきっかけとなりました。

 

まとめ

  

 以上、長くなりましたが、個人的な『ターミネーター:ニューフェイト』の感想です。最後まで読んでいただきありがとうございます。ターミネーターは思い入れがある分、ちょっと熱が入りました。

 

   CG、洗練されたターミネーターマナー、日本のアニメや漫画からの影響、犬、どこから見ても『ターミネーター:ニューフェイト』はターミネーターの正当な続編です。

 

  本作が『ターミネーター3』が超えられなかったキャスティングやストーリーの整合性、映像表現などのハードルをいくつも超えた事は間違いありません。

  しかし、優劣では語りたくありません。全てのシリーズがあっての『ターミネーター:ニューフェイト』です。

  今後どんなターミネーターの新作が公開されたとしても、議論も含めて楽しむことこそが、本来のターミネーターマナーであると私は思います。

   

監督:ティム・ミラー『ターミネーター:ニューフェイト』2019

 

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