恩田陸の小説『蜜蜂と遠雷』はとても面白い小説でした。
ピアノコンテストを小説にするというのはとても難しい試みのように思えましたが、読んでみると実際に音が聞こえるかのような素晴らしい作品でした。
音楽を小説にすることに成功した『蜜蜂と遠雷』を今度は映画化すると知った時、一体どうやって映像化するのか、大量に登場する音楽や人物をどう表現するのかとても興味がありました。
実際に鑑賞してみた感想は、期待通りのとても素晴らしい作品に仕上がっていたと思います。
今回は、小説『蜜蜂と遠雷』の映画化がなぜ高評価の成功を収めたのかを考察してみます。
あらすじ
芳ヶ江国際ピアノコンクールに集まったピニストたち。
復活をかける元神童・亜夜。不屈の努力家・明石。信念の貴公子・マサル。そして、今は亡き"ピアノの神"が遺した異端児・風間塵。一人の異質な天才の登場により、三人の天才たちの運命が回り始める。
それぞれの想いをかけ、天才たちの戦いの幕が切って落とされる。
はたして、音楽の神様に愛されるのは誰か?
映画『蜜蜂と遠雷』成功の秘密
小説『蜜蜂と遠雷』がなぜ映画化して成功しているのかを私なりに考えて見ました。
理由は3つです。
・原作内容の大胆な省略によって効果的に浮かび上がった作品のテーマ
・音楽の素晴らしさ
・ベストなキャスティング
原作内容の大胆な省略によって効果的に浮かび上がった作品のテーマ
恩田陸の小説『蜜蜂と遠雷』は長編小説です。
小説をそのまま二時間の映画にすることは不可能です。
どこを削り、どこを描くのか、は映画化においてとても重要ですが、本作は原作の重要な部分だけをうまく抽出し、それを映画として見事に再構成した構成になっています。
長い物語をダイジェストで語るのではなく、物語の中の大切な言葉を集めて"詩"にしたような美しさを感じました。
音楽の素晴らしさ
クラシックにはあまり詳しくないのですが、本作の為に錚々たるピアニスト達が演奏を担当しているそうです。
音楽にあまり詳しくなくても、曲のクライマックスや演奏のミスや精度がわかる気がするくらい音楽の演出は素晴らしかったです。
超絶テクニックで圧倒するピアノ演奏のラストは、映画『セッション』を凌駕するほどの迫力あるシーンでした。
ベストなキャスティング
風間塵役の鈴鹿央士がとても良かったです。
物語の中でもとても重要な役柄なので、とんな人が演じるのか最も気になっていました。
天真爛漫で幼さと天才性の混在する役に、鈴鹿央士はピッタリとはまっていたと思います。
そして言うまでもなく、亜夜役の松岡茉優の演技も凄まじかったです。松岡茉優は何をやらせても凄まじいですね。
まとめ
以上、映画『蜜蜂と遠雷』の感想でした。
原作も映画も、どちらも素晴らしいので、両方ともおススメです。
個人的には、まず映画を観て配役をイメージできたら、小説を読むという方法がおススメです。
小説を読んでいる最中に、ピアノコンクールの場面になったら、演奏曲をYouTubeで聴きながら読み進めると、音楽が具体的にイメージ出来きてさらに楽しめます。
監督:石川慶『蜜蜂と遠雷』2020年