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最近読んでよかった本を3つご紹介・『夏物語』『Humankind 希望の歴史』『告白』

秋もそろそろ終わりですね。

『2021年 秋の読書実態調査』によると、コロナ禍をきっかけに本を読む時間が増えたと回答した人は全体の41.2%という結果が出たそうです。

読書の用いるデバイスについては紙媒体が64.7%、スマートフォン49.7%、PC/タブレット43.7%(複数回答)と、社会に普及したデジタルデバイスが人々に読書の機会を増やしたという側面も見られます。

コロナ禍は多くの人に被害を与えましたが、読書を通して人々が元気になったり、素晴らしいアイデアを思いついたりすることで、これまでの社会がより良いものになるきっかけになってくれる事を願うばかりです。

と、いうわけで、今回は私が最近読んでとてもよかったおすすめ本をご紹介したいと思います。

コロナ禍はなんとなく収束の兆しが見えてきたような雰囲気も感じますが、せっかく定着した読書習慣です。本を読むこと自体は季節も選びません。まだまだたくさんある世界中の面白い本に出会うための参考にしていただければと思います。

では早速。

 

『夏物語』

 

秋の話をした後になんですが『夏物語』です。

なんの前情報も入れずに読み始めたところ、過去に読んだことのある川上未映子作品にあまりにも似ていて、またやってしまったか(二度買い)と調べてみたところ理由がわかりました。

本作は、2008年に出版された芥川賞受賞作『乳と卵』を加筆しリメイクした前半と、後半はその登場人物達の8年後を描いた新たな物語によって構成された作品となっています。

読後感として『乳と卵』のエクステンデッド・エディションというよりも、加筆された新たなエピソードによって物語の世界観は大きく広がり、小説としての面白さは格段に増したと感じました。

 

私の思う川上未映子作品の魅力は大きく二つあります。

 

一つは、日常生活で意識的に(又は無自覚に)避けていたもの・憚っていたものをぐいぐいと見せつけられる容赦のない"圧"。理性と好奇心がせめぎ合いながらも、好奇心の欲求が強引に満たされていくような感覚。

もう一つは、深い絶望や悲しみの中にも、微かに、でも確実に存在する"希望"の描き方です。

こんな希望があったのか、という驚きは、救いや感動だけでなく、自分の人生に向き合う勇気も与えてくれるのです。

 

ちなみにこの記事をインスタグラムにアップしたところ、川上未映子さんご自身のアカウント(多分)からの”いいね!”がついていて感激しました。

 

 

『Humankind 希望の歴史』

 

連日報道される犯罪ニュースや残酷な歴史をみて、「人類はほんの少しのきっかけで理性をなくし、常軌を逸した行動も厭わない、【本能的な悪】を抱えているものである」と考えている人も少なくないのではないでしょうか。

しかし、本書『Humankind 希望の歴史』は、人が悪意を剥き出しにした様々な史実や心理学実験、報道などが嘘であったことを次々と暴き、

人は簡単に理性を捨てたりせず、善良であろうと努力する

という事例を、根拠をもって示していきます。

特に最近の不安を煽る暗いニュースや不吉な噂話に気が滅入っている人にこそ、是非本書を手に取って頂き、タイトルにもある"希望の歴史"というものに触れて欲しいと思いました。

 

 

『告白』

 

町田康の『告白』は、河内音頭のスタンダードナンバー『河内十人斬り』をモチーフに、人はなぜ人を殺すのかというテーマに迫る長編小説です。

普段、私の読んでいる本に全く関心の無い息子が、その本の厚さに興味を示して何度も確認に来たくらい分厚い小説です。

"人はなぜ人を殺すのか…"と言われると、なんだか物騒ですし敬遠したくなる方もいらっしゃると思いますが、多分想像しているよりも本作はエンターテイメント性が高く、人間ドラマとして楽しめる作品です。”なぜ人を殺すのか”という哲学的な問いというよりは、人を殺すことになってしまった主人公の心の変遷を描いた共感の持てる親近感のある物語と感じました。

と、言われてもちょっとねぇ…という方のために、私なりにこの作品の面白さを具体的にどう伝えるかを考えて、思いついたのがお笑いコンビ"チュートリアル"の漫才です。

『考えに考え考えすぎた結果、突拍子もない行動をとってしまう』本作の主人公"熊太郎"の挙動は、チュートリアルのネタの世界観にとても近い印象を受けました。あの漫才を見て面白いと感じた人であれば町田康の『告白』はきっと楽しめると思います。

かなりボリューミーな厚切りトーストですが、世の中の常識と反りが合わず追い詰められていく熊太郎の一挙手一投足に、笑い、悲しみ、喜び、憤り、何度も何度も心の突っ込みを入れながら楽しんでみて下さい。あっという間に完食していることにきっと驚くことでしょう。

町田康『告白』を楽しめた方、又は読んでみたいと考えていらっしゃる方へ向けて、個人的に近い印象を受けた好きな作品2つを併せておすすめしておきます。

・小説『地下室の手記』ドストエフスキー著(思弁的な主人公といえばこちら)

・映画『スーパー!』監督ジェームズ・ガン(正義と狂気と笑いといえばこちら)

 

 

以上、最近読んでよかった本を3つご紹介させていただきました。あなたの読んでよかった本も是非教えてくださいね。ではまた。

 

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