イヤーマフとはヘッドフォンのような見た目の防音具の事を言います。作業用として使用される場合が多いですが、最近は聴覚過敏の対処法として用いられることも増えました。
自閉症児に聴覚過敏が伴なう場合は多く、息子も聴覚過敏でした。不安な心理状態の時や、大きな音がしそうな状況(小さな子供たちの集団、すれ違う車等)ではいつも両手で耳を塞いでいました。音に対するストレスがきっかけでパニックを起こす事もありました。
息子が中学生になった頃、担任の先生にイヤーマフの使用を勧められました。その時に抵抗が無かったわけではありません。イヤーマフをつけた見た目も含め、日常に馴染みのない違和感をまた一つ加えなければならないのかと思うと、気持ちは沈みました。「出来れば使いたくない」がその時の私の心境です。
息子はイヤーマフを嫌がりませんでした。少し不思議そうな表情をしましたが、すぐに受け入れた様子でした。
一番のメリットはいままで耳を塞いでいた両手が自由になることです。とっさに耳を塞ぎ、持っていた飲み物をこぼすことも無くなりました。また、音による不安が軽減され、学校生活でも徐々に落ち着きが持てるようになりました。
ある日、誰もいない公園を息子と散歩していた時、私はなんとなく息子にイヤーマフを貸してもらい自分で着けてみました。
木々の揺れる音と風の音が止み、その静寂の中で周りの景色を見渡してみると驚くほど心地よく、音が発する情報が弱まる事で、こんなにも景色の見え方が鮮明に変わるのかと思いました。
特に日常の音に強く意識が向いてしまう聴覚過敏であれば、不快なノイズに囲まれて生活をしているようなものかもしれません。だとすればイヤーマフは必須であると考えるようになりました。
イヤーマフには沢山の種類があります。デザインも性能も様々で、選んだり集めたりしているうちに楽しくなってきます。洋服に合わせてコーディネイトしたり、状況に合わせて使い分けたりしているうちに、生活になくてはならないものとなりました。おすすめはハワードレイトです。一般的なものよりも形状が薄くコンパクトです。装着感が優しいところも気に入っています。
あれから6年が経ち、息子がイヤーマフを着ける機会は少しずつ減っています。経験による音への耐性と身体的成長のおかげで、イヤーマフによる補助を必要としなくなってきたようです。
全ての聴覚過敏が息子と同じだとは思いません。ただ、聴覚過敏にはまず音のストレスを軽減させてあげる事が重要で、結果的に症状が良くなる場合があるというのが私の経験です。
以上、イヤーマフを検討されている方に参考にしていただけたらと思い書きました。
自閉症児との暮らしは不安と葛藤の連続ですが、必ず発見と喜びが追いついてきます。その事を是非覚えておいて欲しいと思います。