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自閉症と一輪車、送迎車

  

    特別支援学校を卒業後、自閉症の息子は障がい者福祉事業所に通い始め3ヵ月が経ちました。

 

 事業所では農作業をしているので首と腕は真っ黒に日焼けをしています。

 両手が白いままなのは、きっと手袋をして作業をしているのでしょう。

 

 

 月末には一か月分の工賃を持って帰ってきます。だいたい3000円くらいですが、息子が頑張って稼いだ価値あるお金です。

 事業所のスタッフの方には一輪車の操作が上手だと褒めて頂きました。

 農場で草取りをして、集めた草を何度も一輪車で運んでいるそうです。

 在学中に農作業班で頑張った事が役に立っています。

 私が言うのもなんですが息子は一輪車の扱いがとても上手です。

 将来、私が年老いて歩けなくなったら息子に一輪車で運んでもらう予定です。冗談です。

 

 

 毎朝、息子を送り出す時は「いってらっしゃい!」と声をかけ背中をポンとたたきます。

 息子は振り返る事もなく事業所の送迎車に乗り込み、定位置に座ります。そして、ずっと下を向いています。

 下を向いたままの息子がなにを考えているのかはわかりません。事業所に行くことが楽しみでワクワクしているのか、それとも不安な気持ちと闘っているのか。

 ゆっくりと走り出す送迎車は、そんな下を向いたままの息子を事業所へ運んで行きます。

 

 

 走り去る送迎車を見ながら、私は車の中の息子の様子を想像します。

 駅の近くでは通り過ぎる新幹線を見る事ができるでしょうか。

 お気に入りの"40"の道路標識を見て喜んでいるでしょうか。

 雨の日なら、高速で動く車のワイパーが面白くて笑ったり、揺れる街路樹を飽きる事なく見つめたり、送迎車での時間がそんなひと時であったらいいなと思っています。

 

 

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