FAMILY

自閉症と幼稚園

 

 自閉症の息子は3歳の時に、最初の幼稚園に入園します。

 

  当時、自閉症の判定を受けたばかりで、どんな幼稚園なら息子に対応してもらえるか、どうすれば自閉症が治るか、という事をいつも考えていました。

 

  最終的に選んだ幼稚園はいわゆる"シュタイナー教育"というメソッドを取り入れている幼稚園でした。

  シュタイナー教育の象徴である"子どもの自由な自己決定"という概念は、集団行動が苦手な息子にとって、最適だと感じたのです。

 

   当時の主治医に決定した進路について話すと、主治医からは「まぁ、やってみたらいいでしょう」と言われました。

    私は主治医から「それはベストな選択です!」と言われると思っていたので、主治医がなぜそのようなリアクションだったのかが気になりましたが、入園して間もなくその理由を理解しました。

 

 

   "自由な自己決定"というのは、主体性があるという事が前提となっています。

   まず、やりたい事があり、それをやり遂げるにはどうすればよいか、という自己決定を尊重する、というのがシュタイナー教育のテーマの一つですが、自閉症の息子にとっては、"自分が何をしたいのか"よりも、"次に何が起きるのか"という不安のほうを強く感じてしまっていたのだと思います。

 

  結果的に息子は、何をどうしていいかわからず、一人うんていの上に登り、毎日そこで泣き続ける、という日々を続けました。

  先生方は、その息子の主体性を重んじてくれたのか、しばらくその状態は続きます。

  私は、息子に気づかれないように幼稚園から少し離れた場所で、その様子を見続けながら、どうしてもその状態から、息子の成長が好転するとは思えなくなりました。

   もう少し様子を見れば、何か変化が見られたのかもしれませんし、話し合うことで、何か方法が見つかったかもしれません。

   ただ、現状の息子を長期的に見守ってみようと思えるほど、その頃の私には精神的な余裕はありませんでした。

 

   

   数日後、いろいろな人の話を聞き、自分でもよく考えた結果、受け入れてくれる場所を新たに探す事を決めます。

  受け入れてくれることになった場所は家か少し離れた場所にある保育園でした。

 

  息子に対しほぼ個別に担当先生がついてくれる事になったことと、息子の他にも知的な障害を持つお子さんがいた事は安心材料になりました。

  その保育園で気づいた事は、集団行動は苦手でも、息子はみんなと過ごしたいという気持ちはあったということです。

   会話はできなくても、息子がみんなの様子見ながら微笑んでいるのを見ると、そんな風に思えるのです。

 

  息子の問題行動はたまにありましたが、個別に先生がついてくれた事で、それからの2年間、保育園での生活はとても有意義なものになりました。

  息子の保育園時代の写真には、どの写真にも息子の横には必ず担当先生が写っています。

  私は、それらの写真を見るたびに感謝の気持ちと、よりよい園での生活を送るために、先生方と一緒に悩み考えた日々を思い出します。

 

  

   環境を変えるには勇気が要ります。

   しかし、不安な時、状況が好転しない時は何か別の方法があるのではないか、と考えてみるのもいいかもしれません。

  

   即座に対応する余裕の無い時は、現状を継続しながら、同時進行で別なプランも考えてみるという方法でもいいと思います。

   療育の悩みは尽きませんが、私もその方法は今も続けています。

 

-FAMILY

Copyright© MASS hair studio , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.