今年の3月に"指示待ち"という問題行動について書きました。
こちら↓
その後、息子の指示待ちはさらにエスカレートし、"歩く"という単純な動作でさえも困難な状況になってしまいました。
足を一歩前に出すだけでも、足を上げる、膝を曲げる、足を前に出す、つま先を地面に着ける、踵を地面につける、という五分割の動作になってしまい、動作の一つ一つに指示を待ち、その都度介助が必要です。
加えて、食欲の減退とともに体重は減り続け、笑顔が減り、家庭内での挙動は落ち着いているというよりは、あまり動かなくなってきたという表現が当てはまるような気がします。
原因として考えたのは、環境の変化によるストレスです。
これまで大きな問題も無かったため、息子は卒業後、新たな事業所という環境へスムーズに移行できたと思っていました。
しかし、もしかするとそれは私の勝手な思い込みで、息子には訴えることのできないなんらかのストレスがあり、それらが少しずつ積み重なった結果、"指示待ち"という問題行動となって顕在化したのかもしれません。
年間を通してスケジューリングされ、慣れ親しんだ学校生活に比べると事業所での生活はまだ日も浅く、作業も複雑で多様です。
これまでとは違った見通しの立たない環境の中、意思の疎通がうまく出来ない息子は、自身がとるべき行動が判断できず、結果的に指示を仰ぐ(指示を待つ)ことばかりが増え、主体性が薄れ、一挙手一投足、指示を受けなければ行動できなくなってしまった、そして、その影響からこれまで指示の必要のなかった家庭内でも、指示を待たなければ行動出来なくなってしまったのではないか、と考えるようになりました。
指示待ちは、環境の変化に対応するための一時的なもの、環境に慣れればそのうち治る、成長の一環、と楽観視されることもあります。
実は私もそうでした。
自閉症スペクトラムの特徴である落ち着きのない"多動行動"が軽減することで"落ち着きを得た"と感じられるためです。
しかし一方では、極度の指示待ちの場合、心的ストレスによる、抑うつ症、うつ病、統合失調症などの二次障害の発症と考える事もできるそうです。
これまで成長だと思っていたことが、実際はそうでは無かったのかもしれないと感じた私は、楽観視していた息子に起きた細かな変化と現在の様子を主治医に相談してみました。
結論から言えば、状況からみて二次障害の可能性は否めないということでした。
対策として、現在服用している薬に加え、フルボキサミン(抗うつ剤)の服用を試してみることになりました。
フルボキサミンの効能効果は、”不安や緊張をやわらげる・意味がないと分かっていても、特定の考えが頭から離れなかったり、ある行動を繰返さずにはいられないという状態を改善する・気持ちを楽にして、意欲を高める” とあります。
今の息子の状態には、とても期待が持てそうな効能です。
副作用や中止後の離脱症状などを考えると、あまり薬は増やしたくはないのですが、先入観に囚われず、環境の見直しや改善と並行しながら、柔軟に対応していきたいと思います。
とりあえずとても苦い薬らしいので、息子が飲んでくれるかが心配です。
今回の件で、私は自閉症の療育は一進一退だとつくづく思いました。
自閉症スペクトラムの療育は変化の見えにくい地道な関わりです。そのため、ほんの少しの変化を喜びたくなる…というより、その小さな成長の可能性に縋り(すがり)たくなるような心理が働きます。
しかしその楽観は、実際に起きている細かなサインを見逃してしまうような事も起こりうると実感する出来事でした。
再び気持ちを切り替えて取り組まなくてはなりません。
まずは朝の忙しい時間、気持ちの余裕を持つために目覚ましのアラームを30分早めるところからスタートしてみます。