療育という言葉の意味を調べると、"訓練する事で障害を軽減、克服することではなく、障害を持ちつつ成長する子どもをいろいろな面から支える総体的な取り組み"とあります。
息子が自閉症の診断を受けたばかりの頃、私は、この言葉のニュアンスがよくわかりませんでしたが、今はよくわかります。
たとえば、息子の場合は耐えられない状況になると、暴れたり叩いたりが日常茶飯事でした。
言葉で気持ちを表現できないために、耐えられない状況からくるフラストレーションを他害行為で表現しているわけです。
しかし、どんな理由であれ社会的に他害行為は許されません。
教育や指導をする立場からすれば、注意したり叱ったりする必要があると考えます。
ただし、他害行為に対し、単純に注意したり叱ったりすれば解決できるほど、問題は簡単ではありません。
なぜなら、例えば息子の問題行動は他害が目的なのではなく、自分の置かれた耐えられない状況から逃れる為の"代償行動"だからです。
つまり、耐えられない状況から逃れるために、他害を行い、叱られる方を選んだという事になります。
これが成功体験となり、次に同じ状況になった時に繰り返されます。
対抗してさらに強く叱ると、さらに強く暴れるという負の連鎖が起きます。
ならどうするかというと、まず、《原因となった耐えられない状況とは一体何だったのか》を考えます。
可能であれば出来るだけそのような状況になる事を避けます。
避けるのが難しければ、前もって予告をして不安を軽減させたり、喜ぶ言葉や歌などで状況をなごませたり、手遊びをしたり、お気に入りのおもちゃを密かに携帯しておいて、チラ見せしたり、渡したりして、ストレスを緩和させます。
それでもだめだった時は、落ち着いた後に原因と対策を再び考えるしかないでしょう。
少なくとも、パニック時にこちらがなんらかの対応をしている事が相手伝わるだけでも、効果はあると思います。
ただの甘やかしと捉える人もいるでしょう。
私も、甘やかしは良くないと思っていた時期がありました。しかし、やみくもに厳しくし 、息子に理解を強いるような単純な方法では、決してうまくはいきませんでした。
むしろ問題行動は酷くなっていったような気もします。
思考や感情の複雑さを理解し、《混乱を招く状況を日常から取り除く》という方法に切り替えてみると、お互いの雰囲気は徐々に穏やかになります。他害行為のような問題行動も確実に減っていきました。
怒ってもだめ、叩いてもだめ、のような負の連鎖に陥った時、特に役に立つ方法なのではないでしょうか。
今まさに当時の私達のような状況にある方は是非試してみて下さい。
条件反射的にただ叱るよりも、なぜそうなったかを深く考え、回避する方法を見つけることが重要です。
遠回りのようですが、結果的には効率的な方法だと思います。