MOVIE

映画『輪廻の少年』から考える輪廻転生

科学的な根拠はともかく、自分の前世が歴史的な偉人であればそれはそれで嬉しいですが、地球上の生態系を考えると前世が微生物であった確率が高すぎるためなかなか妄想に酔えません。
しかし、この『輪廻の少年』というドキュメンタリー映画を観た事によって輪廻転生という考え方に対するイメージが変わりました。

以下あらすじです。

"インドのラダック地方。パドマ・アンドゥは「リンポチェ(輪廻転生の高僧)」とされる少年です。中国政府の政策により、ラダックとチベットは自由に往来できず、少年は次第に自らの能力(前世の記憶)を失いかけていました。少年に力を取り戻させるため、世話役を任されていた初老の僧侶ウルギャンは少年を連れチベットを目指し旅に出ることを決意します。"

劇中の僧侶ウルギャンはチベット仏教という信仰を持っています。その教えの中には輪廻転生というものがあり、とにかくそのリンポチェを大事に育てろ、という使命を受けます。

なんで俺がこんな事やらなきゃいけないんだ、とか、ほんとに高僧の生まれ変わりなのか?などと思っていたかもしれません。

一方、少年のリンポチェも、そういうことになっちゃったけど勘違いだったらどうしよう、とか、やっぱり普通の生活がよかった、などと思っていたかもしれません。しかし、二人は生活や過酷な旅を通して、互いを尊重できるようになり 、互いに相応しい人物になるべく成長を始めます。そして、リンポチェは高僧の生まれ変わりのように見え始め、それを見るウルギャンは自分の使命に誇りを見出します。

 

作品を観賞しながら私は、輪廻転生という考えそのものが、何かとてもいいもののように思えてきました。なぜならそれは未知のものへの寛容にあふれた教えに見えたからです。

一言に輪廻転生の高僧と言われても猜疑心に揺れないはずはありません。それでもそれを無条件に尊重することで、尊重される側もそれらしく振る舞うようになり、最終的にはお互いの尊厳を理解し合う。これが輪廻転生という考えの付加価値なのであれば、とても素晴らしい考えなのではないかと思いました。ちなみにこの作品の観賞後、私の息子は"輪廻転生の高僧"という設定で日々を暮らしおります。

 

舞台となるラダックの雄大な自然も作品の見どころです。その土地に住む人々の素朴暮らしや、チベット仏教の現実なども描かれています。
いろいろなドキュメンタリー映画を観てきましたがなかなかここまで感動できる作品はありません。たとえ前世が微生物だったとしても自信を持っておすすめします。

監督:ムン・チャンヨン『輪廻の少年』2017年製作

-MOVIE

Copyright© MASS hair studio , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.