コロナ禍により各局のテレビ番組は制作が困難となり、急ごしらえのバラエティや再放送のドラマが増えました。
そんな中、優良な映像コンテンツをもとめ、ネットフリックスやAmazonプライムビデオなどの動画配信サービスに加入した方も多いのではないでしょうか。
今回は、ネットフリックスの配信番組の中でも、視聴回数トップを独走中の超人気韓国ドラマ『愛の不時着』をご紹介したいと思います。
あらすじ
"韓国の財閥令嬢ユン・セリは、パラグライダーで飛行中、竜巻に巻き込まれ、軍事境界線を越えてしまいます。
北朝鮮の国内に不時着してしまったユン・セリは北朝鮮軍の精悍な中隊長リ・ジョンヒョクと出会います。
敵対国の国民という境遇でありながら、リはユン・セリを匿い韓国に脱出させる計画を企てますが…。"
ネットフリックスで配信されている数々の作品の中で、アカデミー賞作品、エミー賞作品を差し置き、この『愛の不時着』が最高視聴回数ドラマであるということは一体どういう事なのか、という理由から韓国ドラマ『愛の不時着』を観る事にしました。
この作品を一言で表現するとするならば、"全部のせ"です。
アクション、サスペンス、コメディ、ラブロマンス、全てのジャンルが詰めこまれています。
その中でも、ややコメディの要素を強めた事がヒットの要因なのではないでしょうか。
ロミオとジュリエットのような典型的な悲恋を描いているにも関わらず、爆笑してしまうようなシーンがいくつもあることで老若男女、全ての世代にウケたのではないかと思います。
サービス精神に溢れたとても楽しいエンターテインメント作品です。
主役のユン・セリが受け身の可愛い女性ではなく、能動的で問題解決能力の高い優れた実業家という設定がよかったですね。リが無垢で直向きな軍人という設定なので、とてもバランスがとれていたと思います。
実をいうと、私はほとんどの韓国ドラマを"長い"という言う理由から観ることを避けてきました。
『愛の不時着』という作品も1話あたり約90分、全16話というボリュームは、他の韓国ドラマ(全70話とか)よりは短めかもしれませんが、私にとっては躊躇してしまう長さです。
それでも、ここまで人気なのはきっと理由があるに違いないと思い、数日かけて全話を見終えたわけですが、私は『愛の不時着』を観ながら韓国ドラマがなぜ長いのか、長くなるのかの理由がわかったような気がしました。
その理由とは、"全ての気持ちを言葉(台詞)にしているから"なのではないか、ということです。
全ての気持ちを言語化すれば、台詞は増えます。その分時間は長くなります。
こう言うと、冗長だと言っているように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。
人間の心理をわかりやすく言葉で説明しようとすればするほど、映像作品においては、説明過多な稚拙な演出になってしまいそうですが、韓国作品はそこを恐れません。
韓国作品の登場人物達は、何を考えているか、何をしたいのかを、はっきりと正確に言葉にします。相手をどのくらい好きだと思っているか、自分がどんなふうに悲しい気持ちなのか、どのように相手に報復したいか、など、言葉で気持ちを伝える事を重要視しているのです。この正直さとわかりやすさが共感を生み、現在も韓国ドラマが支持されているのでははないかと思いました。
特に日本人は気持ちを言葉にする行為を"無粋"と言って避けがちです。気持ちを言葉にする事を避け続けた事によって、言わなくてもわかるはずだ、わからないひとは理解力がない、という傲りに繋がっている部分もあるかもしれません。
自分の気持ちを言葉にする努力は価値のある事です。
たとえそれが韓国ドラマのように長尺になったとしても、お互いに気持ちを理解し合えるの事のほうが、遥かに重要なのではないでしょうか。