SF映画の歴史的名作『2001年宇宙の旅』ですが、鑑賞中に寝てしまう映画としても有名です。
この作品がなぜ傑作なのかを書くと長文になってしまいそうなので、今回は、なぜ寝てしまうのかに焦点を当てて解説してみようと思います。
『2001年宇宙の旅』が眠くなってしまう理由は大きくわけて3つあるでしょう。
1・セリフが無い
2・音が無い
3・説明が無い
こう見ると、もはや映画として成立してないのではないか、と思う方もいるでしょう。
順番に説明していきます。
1・セリフが無い
この作品の完全版を観た人ならわかるのですが、冒頭の約3分、画面は真っ暗です。
もうこの時点で、寝不足であれば作品の1シーンも見ることなく眠る人がいてもおかしくありません。
やっと本編が始まると、ホモ・サピエンスの始祖であるヒトザルのシーンです。ヒトザルですから喋ることはありません。
その後、宇宙船、宇宙ステーション、宇宙旅行の様子が描かれますが、ここでもセリフは皆無です。計算すると冒頭からなんと約30分はセリフがないことになります。
2・音が無い
宇宙空間では音が発生しないので、演出上、あえて無音を多用したと言われています。
宇宙空間のシーンが多いため、必然的に無音の時間が長いです。
3・説明が無い
監督のスタンリー・キューブリックが『映像表現』に対するこだわりが強い事は周知の事実です。
長々と口頭で説明するのではなく、映像で全て説明する、というコンセプトで作られた作品である事は間違いありません。
説明は意図的に省かれています。
以上の3つが眠くなってしまう理由です。
大抵の場合、以上の3つが揃えば思考は停止し、睡魔から逃れることは出来ません。
では、この3つのハードルを越え、作品を楽しむためにはどうすれば良いのでしょうか。
そのヒントは『2001年宇宙の旅』が作られた経緯にあります。
一般的に映画は原作がまずあって、それを元に作品が作られます。
しかし、この作品は、原作者のアーサー・C・クラークと、監督のスタンリー・キューブリックが最初は共同で原案を作り、後に原作と映画をそれぞれの解釈に基づいて、別々に制作されたという経緯があります。
つまり、一つの被写体を二人の天才が異なる手法で描いたということになります。
それによって、結果的に互いの解釈を補完し合うという不思議な構造が生まれました。
映画を観てから原作を読むと、わからなかった事が理解出来て、原作を読んでから映画を観るとイメージできなかったものが映像で確認できるというわけです。
この構造がわかった上で、『2001年宇宙の旅』を観ると、作品の面白さがよくわかります。
私も、映画版のこの作品を何度観ても途中で寝るという経験をしていたのですが、原作を読んだ後は寝ることはありませんでした。
眠くならないだけでなく、作品の素晴らしい部分が次々と発見でき、お得です。
映画版と原作版、どちらも手にとってみることを強くオススメします。
監督:スタンリー・キューブリック『2001年宇宙の旅』1968年