映画のおすすめを聞かれたときに、ラブストーリーなら『ビフォア・サンライズ』を選びます。本当はビフォアシリーズ全部と言いたいところですが、まずは『ビフォア・サンライズ』からです。
この作品は列車の中でたまたま知り合った初対面の男女が恋に落ちるまでを描いています。
とてもよくある話に聞こえますが、この作品は少し違います。登場人物はほぼ二人しか登場せず、全編を通して男女の会話だけで構成されています。
基本的にカット割りがされず、長回しのシーンで構成されているため、会話をする二人の存在感が際立ちます。この手法がラブストーリーを描く上での"二人きりの空間"を描く事に成功しています。
私達が他者と関係を深めていく際、基本となるコミュニケーションは、会話です。
相手の気持ちが知りたい時、自分の気持ちを伝えたい時、その時々の言葉の選択によって、お互いの関係は揺れ動きます。会話の選択を間違えれば、相手との距離が生まれ、正解であれば互いの距離は近くなる。
その微妙なニュアンスを『ビフォア・サンライズ』は、ひたすら会話に焦点を当てることで、男女の間に恋愛感情が生まれていくまでの心の動きを淡々と見せてくれます。淡々としてますが、決して聞き飽きる事の無い二人の会話は、会話というものが、恋愛においていかに素晴らしく、いかに大切かを知るきっかけになるはずです。
恋愛中の人もこれからの人にもおすすめです。
監督:リチャード・リンクレイター『ビフォア・サンライズ』1995年