自分の殻に閉じこもってしまう、もしくは閉じこもりたいと思った経験はないでしょうか。
私は、現在はそれほどでもありませんが、昔はそんな気持ちの時が何度もありました。
今回の映画は、そんな気持ちを持った事がある人であれば、きっと共感できて、楽しめる作品です。
~あらすじ~
"「ぼくは一生、団地の中だけで生きていく ! 」
12歳の春、周囲を仰天させる一大決心をした悟。外出は団地の敷地内だけで充分。初恋も、親友も、就職も、結婚も、何だって団地の中だけで出来る。
優しい母親と友人たちに見守られ、悟はそうやって団地の中で日々を過ごし成長していく。
しかし、時が経つにつれ、団地で暮らす友人たちは、ひとり、またひとりと悟の前から去っていき、あんなに賑やかだった団地も少しずつ寂れていってしまう。それでも悟は団地の外に出ようとはしなかった。
そしてある日、そんな悟の日常と一大決心を揺るがす、とても大きな出来事が起きるのだった…。 "
この作品は、今から8年ほど前に公開された日本映画です。
あらすじには書いてありませんが、主人公が団地から出なくなった理由は、小学生のときに、教室に侵入した不審者によって友達が刺殺されるところを目撃してしまった事によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)が要因となっています。
そんな主人公の"悟"がとった団地から出ないという生存戦略は、自身の抱えた問題と、自分が生きている社会を繋ぐための唯一の方法だったのだと思います。
しかし、それが永遠に続くわけではなく、団地も自分を取り巻く環境も、年月と共に変化してしまった時、主人公の悟がどのように行動するのかが、この作品のクライマックスとなっています。
あまり知られていない本作ですが、人が自分の殻を破る瞬間を描いた素晴らしい作品です。自信をもっておススメします。
余談ですが、今ではauのCM等でお馴染みの"濱田岳"が主人公の悟を演じています。
私はこの作品以降、濱田岳のファンです。
また、この作品には、まだ注目される前の"田中圭"も出ているのですが、あまりにも最悪な性格の人物の役を演じていたため、そのイメージが強すぎて今だに田中圭を見る度に思い出してしまいます。良い役者の定めですね。
監督:中村義洋『みなさん、さようなら』2012年