『竜馬がゆく』を読んでいると、とても昭和のドラマ感を感じます。
私の感じる「昭和のドラマ感」とは、現代のドラマに比べ制作資金がそこそこ潤沢で、長編のドラマでも一話一話をおおらかにのびのびと作っているというイメージを指します。
本書を読み進めながら、昔見たドラマの再放送を見ているような感覚を覚えました。
現代ではあまり無くなった、不意に始まるラブシーンであったり、あまり手加減のない残酷なシーンがあったりする感じが、更に昭和のドラマっぽさを感じさせるのかもしれません。
『竜馬がゆく(五)』~西郷と竜馬~ 旅人宿「池田屋」に集結していた長州藩・土佐藩を中心とした尊王攘夷派志士を新撰組が襲撃した"池田屋の変" 復権のため京都に挙兵した長州藩と会津藩・薩摩藩の連合軍との間に起きた大規模な戦闘"蛤御門の変" 時勢は急速に緊迫していきます。 次々と死んでゆく同士を思い、竜馬は深く悲しみます。 そんな竜馬に、師匠の勝海舟はある人物に会ってみること勧めます。 ある人物とは、薩摩藩の西郷吉之助、"西郷隆盛"です。 幕末の動乱の中、紛れもなく歴史を作った二人が出会います。
と、いうのが五巻のあらすじです。
よい物語には必ず魅力的な主人公が登場し、さらにその登場人物に匹敵するような魅力を持った仲間やライバルが登場します。
『竜馬がゆく』において西郷隆盛がそのような人物であることは間違いありません。
二人の出会うシーンは、竜馬が藩邸の庭で鈴虫を捕まえていると、西郷が「ほう、鈴虫を獲ってござるか」と竜馬に問いかけます。
すると竜馬は「虫籠は、ありませんかネャ」と言うと、西郷は「籠、籠、」とひどく慌てて籠を探す、というものでした。
このほのぼのとした初対面のシーンが、その後二人の壮絶な人生とあまりにも対照的で、とても印象に残りました。
二人の活躍が楽しみです。
余談ですが、私は幼少の頃、家族旅行で鹿児島に行ったことがあります。
その時に西郷隆盛の墓所である南洲墓所に行きました。
西郷さんの顔ハメ看板に顔を入れた写真があるので間違いありません。
その時に生まれて初めて"切腹"という言葉を知りました。
まだ幼かった私は、解説をしている観光ガイドさんに「せっぷくってなんですかー?」と聞いてみたところ「刀でおなかをきることだよー」と言われ「なにそれ怖っ!!」と、なった事をよく覚えています。
今思えば、小さな子どもに切腹を説明するのって結構難しいですよね。
司馬遼太郎『竜馬がゆく(五)』(1975,8,25)文春文庫