2歳の息子の発達に関して、私は楽観的に考えていました。
息子は2歳になっても、ほとんど発語がありませんでした。
しかし、当時は、今ほどネットを使って何かを調べる習慣は無く、かかりつけの病院でも、特に異常は見られないと言われていたので、きっと息子は、そのうち普通に喋れるようになるのだろうと思っていました。
今回は息子が自閉症かもしれないと意識し始めた時、どのように感じ行動したかを書いてみようと思います。
自閉症の疑い
調べてみると、定型発達児は2歳になる頃に300語、2歳半では450語くらいを使うようになると言われています。
何も知らなかった私は、息子の発語の遅れは個性の一つと思っていました。
ある日、お客様と、子どもの発達についての話をしました。
そのお客様は、2歳の息子さんの発達に悩んでおられ、特に発語の遅れに関しての悩みを話してくださいました。
そのお話を聞きながら、私はうちの息子も同じような感じだと話すと、「息子さんはどんな風に意思を伝えますか」と聞かれたので、「私の腕を引いて欲しいもののところまで連れて行きます」と答えました。
すると、お客様はこうおっしゃいました。
「それは、クレーンと言って自閉症によく見られる現象かもしれません。」
自閉症の拒絶
クレーンという聞きなれない言葉を聞き、とても不安になったことをよく覚えています。
クレーン現象とは、自閉症の子どもによく見られる行動で、何か欲しい物を取って欲しい時に、側にいる人の手首を持って、欲しいものに近づける行動を指します。
定型発達児では、欲しいものがあるきには「ジュース(ちょうだい)」のように言葉で要求したり、欲しい物を指差して「これ」と示すのが普通ですが、言葉で伝えられない自閉症児の場合クレーン現象が起きます。
自閉症児の典型的な行動を我が子がやっていると知ったとき、すぐにその事実を受け入れられませんでした。
私はクレーンをする息子に、何度も「お口で話す」と言い聞かせ続けました。強い口調になってしまった事もあります。
その時は、とにかくクレーン現象が無くなりさえすれば、自閉症ではなくなると思っていたのです。
自閉症を受け入れる準備
息子のクレーン現象は成長と共になくなり、他の方法(短い言葉、指差し)を用いて意思の疎通は出来るようになりまました。
その時は分からなくても、子どもは必ず成長し、例え自閉症であっても、それまでできなかった事はゆっくりですが必ず出来るようになります。
私が息子の自閉症に気づいた(気付かされた)のは、不意に聞かされたクレーン現象という言葉によってでした。
息子が自閉症かもしれないと気づくきっかけとなった最初の言葉だったので、忘れられない言葉です。
私は、最初はその言葉から息子を遠ざけたいと思っていました。その後に知る様々な自閉症の用語からも。
しかし、正式に自閉症の判定を受け、振り返ってみると、少し言葉に(専門用語)に振り回されていたような気もします。
専門知識は、その分野の理解を深めるために役に立ちますが、目の前の子どもをしっかりと見る事、向き合う事のほうが大切だと今は思います。
専門用語や、現象だけにとらわれず、子どもと向き合うことを意識したときに、やっと自閉症を受け入れる準備ができたのだと思いました。
まとめ
自閉症というものを知り、受け入れていくこと、簡単な事ではありません。
ネットや専門書には自閉症についての記事が溢れています。
つい、そういったものが気になり、当てはまるか、当てはまらないかばかりに目が行ってしまい、子どもの行動の奥にある感情の事を忘れがちになってしまいます。
自閉症というものに触れ始めの頃にはには、特にそんなふうになりがちであったことを思い出しました。
自閉症スペクトラムの療育に携わる人々の参考になればと思います。